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東京地方裁判所 昭和28年(ワ)1030号 判決

原告 三菱レイヨン株式会社

被告 東合成樹脂工業株式会社 外一社

一、主  文

被告両名の間において、別紙目録<省略>記載の物件につき昭和二十七年八月二十日賃貸人を被告東合成樹脂工業株式会社、賃借人を被告日本模造真珠株式会社とし、期間三年、賃料一ケ月金四千円、期間中賃料全部前払の特約を以て締結された賃貸借契約はこれを解除する。

訴訟費用は被告等の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、その請求の原因として、被告東合成樹脂工業株式会社(以下被告東合成と略称する)は昭和二十六年九月三十日同会社が原告(当時の商号は新光レイヨン株式会社)に対し負担する現在の債務及び将来負担すべき債務を担保するため、その所有に係る別紙目録記載の工場に属する建物及び機械器具その他工場の用に供する物の上に工場抵当法第三条の規定により期間の定めなき債権極度額四百五十万円順位第一番の根抵当権を設定し、同年十一月十四日その旨根抵当権設定登記を経由したところ、その後原告は被告東合成に対し総額四百九十六万五千二十五円六十銭の約束手形金債権を取得するに至つたので、前記債権極度額四百五十万円の限度において別紙目録記載の抵当物件につき根抵当権実行による競売申立をなし、昭和二十七年九月十八日競売開始決定(東京地方裁判所昭和二十七年(ケ)第六一四号)を得、目下競売手続進行中である。しかるに、これよりさき、被告東合成は昭和二十七年八月二十日被告日本模造真珠株式会社(以下被告日本模造と略称する)に対し前記抵当物件を期間三年、賃料一ケ月金四千円、期間中賃料全部前払の約定で一括賃貸し、その引渡を了した。もつとも、賃貸借は民法第三百九十五条所定の期間内のものではあるが、前記抵当物件の価額は原告の抵当債権額を補償し得るに足らないところ、これに賃借権の附帯することによりさらに競売価額の値下りを来すべきことは明かであるから、原告は抵当権者としてその損害を免れるべく、民法第三百九十五条但書の規定により前記、貸借の解除を求めるため本訴に及んだ。と陳述し、立証として甲第一号証の一、二、同第二、三号証、同第四号証の一の(イ)(ロ)、二の(イ)(ロ)(ハ)同第五号証を提出した。

被告両名訴訟代理人は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、被告東合成の答弁として、原告主張の事実中、被告東合成が原告に対し原告主張のような数額の約束手形金債務を負担するとの点及び原告主張の賃貸借により別紙目録記載の抵当物件の価額が値下りを来すとの点は否認するが、その余の主張事実はすべて認める。と、又被告日本模造の答弁として、原告主張の事実中競売手続の開始進行に関する事実、及び被告両名間に原告主張の賃貸借の存続する事実はこれを認めるが、右賃貸借により別紙目録記載の物件の価額が値下りを来すとの点は否認する。その余の主張事実はすべて不知。と述べ、甲号証に対し、同第一号証の一は被告東合成としては成立を認めるが、被告日本模造としては不知、爾余の甲号各証は被告両名ともその成立を認め、同第三号証を利益に援用すると述べた。

三、理  由

作成名義人の一員たる被告東合成において成立を争わないことにより被告日本模造に対する関係においてもその成立を認め得る甲第一号証の一及び当事者間にその成立につき争のない同号証の二の各記載によれば昭和二十六年九月三十日原告(当時の商号は新光レイヨン株式会社)と被告東合成との間に同被告所有の別紙目録記載の物件につき原告主張のような根抵当権設定契約が成立し、同年十一月十四日その旨根抵当権設定登記が経由されたことを認め得べく、原告が右抵当権に基き別紙目録記載の抵当物件につき競売の申立をなし、昭和二十七年九月十八日競売開始決定(東京地方裁判所昭和二十七年(ケ)第六一四号)を得、目下競売手続進行中であることは当事者間に争なく、成立に争のない甲第二号証の記載によれば右抵当債権額は本件根抵当の債権極度額たる金四百五十万円であることを認めるに足り、他に右抵当債権の存在を否定すべき証拠はない。

よつて進んで按ずるに、昭和二十七年八月二十日前記抵当物件につき被告両名間に原告主張のような賃貸借契約が成立し、目的物件の引渡を了したことは当事者間に争ないところであり、右賃貸借は民法第三百九十五条所定の期間内のものであるから一応抵当権者たる原告に対抗し得るものであるが、成立に争のない甲第五号証の記載によれば前記抵当物件中機械器具類等で散逸したものもあるが、昭和二十八年一月三十日現在における右抵当物件の総評価額は金七十九万一千四百円に過ぎず、前記抵当債権額四百五十万円をはるかに下廻るものであることが認められ、本件口頭弁論終結当時たる昭和二十八年六月二十四日においても右抵当債権額を上廻る程の値上りがあつたとは現下の物価事情に照し到底認められない。然り而して抵当物件が賃借権の附帯することによつて値下りを招来すべきことは見易いところであるから、本件にあつても前記賃貸借の存続する限り、本件抵当物件の価額は勢い低減せられざるを得ず、かくては抵当権者たる原告は前記の如く、抵当債権全額の満足を得られない上に、さらに不利益を蒙むることになり、民法第三百九十五条但書所定の場合に該当することが明かであるから、被告両名間の前記賃貸借はこれを解除するのを相当と認める。

よつて原告の本訴請求を認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、第九十三条第一項を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 古山宏)

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